製薬企業のパイプラインってどういう意味?



どーもパブロ(@culionlifehack1)です。



一般の方にとって分かりづらい、製薬業界の用語を解説していきます。

今回はパイプラインについて。

パイプラインの意味、重要性は?

簡単にいうと、研究開発中の薬剤のラインナップのことです。

基本的に、企業HP等を確認すれば、現在開発中の薬剤が網羅された資料が出てくるはずです。

なぜこのパイプラインの理解が重要かというと、製薬企業にとって、このパイプラインこそが、将来の収益の源であるからです。

医薬品の開発は10年以上の年月をかけて、必ず決まったステップを踏んで開発が進むので、このパイプラインを見れば大体、何年後にどんな薬剤が出てくるのが、予想がつくわけです。

(※近年は、早期承認制度など、明らかに有効性が期待される場合や、必要性の高いものはフェーズ3を縮小、スキップする制度もありますが、それらも、ルールに基づいているので、必ず事前に把握できます。)

他の産業をみてみると、例えばカルビーが次にどんなお菓子を開発しているのか?なんて、内部の人じゃないとなかなか知り得ないですよね。

もちろん、製薬セクター自体が景気に左右されない、参入障壁が高いなど、色んな要因はありますが、知識がある人がこのパイプラインをみれば、将来的な事業の見通しがある程度予想できることも製薬企業がディフェンシブ銘柄と言われる要因の一つでしょう。

つまり、投資家やマーケターが製薬企業について企業分析する際には切っても切れないのがパイプラインで、非常に重要な存在になのです。

具体的な開発ステップは?

製薬企業の報告しているパイプラインは主に後期試験(ヒトに対する投与)の段階に進んだものですが、実はそのもっと前から研究開発のステップは進んでいます。

スクリーニング

特定の作用を有する化合物をひたすら集めまくる。
その中で、1番、理想的な働きをしそうな化合物を選定する。

前期試験

ラットやイヌなど、動物実験によって、実際に期待した作用および安全性が現れるか確かめてみる

という、ステップを踏んで、初めてヒトに対する臨床試験が開始されます。

ヒトに対する臨床試験は以下の流れで進み、
これがパイプラインとして、公開されています。これらの臨床試験は治験とも呼ばれるもので、こちらの方が馴染みがあるかもしれません。

製薬企業パイプライン
製薬企業パイプラインのイメージ図
フェーズ1

ごく少人数の健康な方を対象に少量と投与を行なって作用と安全性を確認。

フェーズ2

少数の患者さんを対象に安全性の確認と、適切な容量設定を行うための試験。

フェーズ3

多数の患者を対象に有効性、安全性の確認。

これをクリアすると晴れて、新薬の誕生となります。

しかし企業は厚生労働省に治験の結果を報告し、審議を受けて


①製造販売承認を得る、
②薬価収載(薬の価格の決定)される
③発売する


という手続きを経るため、治験終了から発売までにさらに1年〜2年程度の年月を要します。

なお治験に成功した段階で有効性、安全性はひとまず確認されているので、ここの申請手続で、承認されないということはほぼありません。

(たまーに、決定された薬価に納得できないなど、揉めることはありますが。。。)

つまり、一つ一つの薬剤の発売にはトータルで少なくとも7〜10年ぐらい開発期間が必要です。

後述しますが、近年の医薬品開発は非常に難易度があがっており、途中で試験中止に至ることも多いです。

ですから、目安としては3年後を見据えて、フェーズ3の開発状況を確認するというのが良いでしょう。

画期的な薬剤であれば、フェーズ2ぐらいから、色んな評判が聞こえてくるので、この辺で抑えておいても十分間に合います。


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研究開発の難しさ

簡単にパイプラインと言っても、そんな次々と開発できる訳ではありません。

最終的に、患者や医療に与えるインパクトや、収益性を考慮して開発を進めていく訳ですが、今や、医薬品の開発の成功確率は何万分の1とも言われています。

ですから、フェーズ2やフェーズ3まで行っていた大型新薬がいきなり、失敗。

株価低迷なんてことも日常茶飯事です。

それぞれ製薬企業は非常に大きな資金力で、リスクヘッジをしていますが、やっていることは、ほとんど宝クジを引き当てるような確率の研究開発に10年後の企業の運命を託しているようなものです。

グローバルトップと企業が年間1兆円近い研究開発費を投下しているのに対して、国内企業はトップの武田薬品でも年間3000億程度です。(シァイアーの買収によって変わるかもしれません。)

これが、何十年も続けば、製薬にとって1番大事な研究開発においてどちらが有利かは火を見るより、明らかです。

宝クジを買っている口数が3倍以上違うわけですから。。

ですから、近年は、リスクヘッジの方法として開発に成功した薬剤のライセンスを取得して、販売に関わるロイヤリティを得たり、企業間の相乗効果が期待される場合は、M&Aで企業ごと買収することもあります。

まとめ

実際には競合品や薬価、市場のトレンドの影響などで正確に業績を予測することは難しいですが、このパイプラインを徹底的に調べることで、ある程度の企業の方向性や将来性が分かるということです。

今一度、自分のチェックしている、企業のパイプラインを確認してみては如何でしょうか。