どーもパブロ(@culionlifehack1)です。
インフラや食料品に並んで一般的にディフェンシブ銘柄と言われる製薬セクター。
果たして本当にディフェンシブなのでしょうか?
結論からいうと、2000年代後半までの製薬業界の状況と比較して現在の製薬業界は環境が一変しています。
その中で、私は投資が可能な医薬品銘柄に現在、ディフェンシブと呼ばれる要素はないと考えています。
もちろんディフェンシブでないから投資先として魅力がないかと言われればそうではありません。
しかし、単純に安定資産としてインカムゲインを得る様な投資の方法はオススメできません。
NISAの制度が始まった時に、高配当の武田薬品が人気を博しましたが、製薬業界の動向を調べればその様な投資はリスキーだと考えています。
以下に現在の製薬業界の動向と、私なりの意見をまとめて見たいと思います。
目次
ディフェンシブ銘柄とはなにか?
サブプライムローン問題など、世界的な株安の際に比較的安定的な投資先として注目を浴びるディフェンシブ銘柄ですが、根本は景気に左右されない安定的な需要を持った銘柄、業界を指します。
代表的なものは電気、ガス、医薬品、交通機関、通信インフラが挙げられるでしょう。
確かにこれらは、景気がよかろうが、悪かろうが、顧客を失うことがありません。
医薬品についても、お金がないから治療をやめるという人はいないでしょう。
(一般論であり、実際には、金銭的な医療アクセスの問題は存在しますが、、、)
2010年までの製薬企業はディフェンシブだった!?
それでは過去の製薬企業を振り返った時に、医薬品(製薬企業)がディフェンシブだったというのは当てはまるのでしょうか?
これは、間違いなくディフェンシブであったと言えると思います。
大手の製薬企業の配当はすべての業界を比較をしても高水準です。
これは現在も変わらない事実です。
また、業績を見ても大手〜中堅の大方の製薬企業が、2010年頃まで、ずっと右肩上がりの成長を続けてきました。
株価で言えば、リーマンショックや世界情勢など、様々な要因で上下はありましたが、業績はずっと右肩上がりですから、短期、中期的な視点では損もありますが、配当を得ながら、耐えればやがてプラス圏へもどってくる算段がつくわけです。
特に製薬企業の医薬品の値段は公的価格である薬価と言われるものがあり、値引きや競合との価格競争はありません。
需要が大きく変わることもなく、それに応じた成長戦略を立てるのは簡単です。
つまり、持続的に新しい医薬品を生み出すことができれば半永久的に右肩上がりの成長戦略を描けた時代だったわけです。
さらにこの頃の国内製薬企業はみな優秀で、グローバルで年間1,000億円以上の売上を誇る「ブロックバスター」と呼ばれる大型医薬品がゴロゴロ発売されました。
その代表がエーザイや武田薬品です。
また更なるスケールメリットを求めてM&Aによって誕生し、国内のトップ企業となったのがアステラスと第一三共です。
このように、2010年以前の製薬企業は非常に投資対象として非常に魅力的でした。
2010年以降の製薬業界に何が起こっているのか?
しかし、上記の状況は2010年以降、徐々に変化し始めています。
そして最近では、むしろ一気に先の読めない、マーケットになりつつあります。
以下にそのポイントを列挙していきます。
外資系メガファーマの台頭
これは最近に始まったことではありませんが、外資系のメガファーマが国内で力をつけてきた印象を受けます。
国内企業がなかなか新たな薬剤を出せない中、抗がん剤や希少疾患など、高額な医薬品が次々に出てきています。
その理由は、莫大な研究開発費です。
国内最大手の武田が年間3,000億程の研究開発費に対してメガファーマと呼ばれる外資系の大手は1兆円近い研究費を投下しています。
外資系の国内での存在感の増加によって、国内の製薬企業はより競争に晒され、特色や強みを生かした経営判断が、業績に直結する傾向が強くなってきました。
ブロックバスターモデルの終焉
前述したブロックバスターですが、過去に日本発のブロックバスターが次々に出たきた時代とは大きく潮目が変わりました。
理由は低分子化合物の領域における、研究開発の限界です。日本が得意だった低分子化合物と言われる分野はすでに一通りの研究がし尽くされました。
今後、この領域から、画期的な新薬を見つけてくることは以前に比べて相当難しくなっています。
高分子化合物や、これまで研究がされてこなかった希少疾患領域へのシフトチェンジは簡単ではありません。
すでに外資系に遅れを取っていますし、自分の得意分野を捨てて、新しい領域に移ることは、人、モノ、カネの観点から別の企業に生まれ変わるほどの変化と言っても過言ではないと思います。
この様なことから、これまでピーク時に1,000億円程度の売上を見込む製品を狙っていた大手企業が、最近ではピーク時に200〜300程度の医薬品を複数だすことを狙っている印象を受けます。そのために各企業はパイプラインの拡充ためにベンチャーとの提携、ライセンスインや小型のM&Aを進めています。
一見、問題のない行為に見えますが、自前で製品を生み出していた際に比べて、圧倒的に利益率が下がることは明白です。
そのために、この傾向は、中長期的に、製薬企業の高利益体質を守ってきた一因を失いかねない戦略だと考えています。
資金力に乏しい国内製薬企業に取っては、やりたくないけど、やらざるを得ない、ボクシングで言えば追い込まれてクリンチをさせられている状態だと思います。
後発品医薬品の普及
いわゆるジェネリック医薬品と呼ばれるモノです。
特許がなくなった医薬品の設計図を元に、低コストで開発製造された医薬品で通常、先発品(オリジナル)よりも半分程度の価格になることが多いです。
最近でこそ認知が進みましたが、2010年以前は、日本は世界的に見ても、異例なほど、後発品が普及してきませんでした。
日本の皆民保険制度が、国民の医療費へのコスト意識をマスクしてきたからです。
しかし、ここに切り込むため、厚生労働省は半ば強制的に後発品に切り替える様に、診療報酬改定という手続きをへて、医療機関、調剤薬局を誘導してきました。
極端に言えば、全て後発品に切り替われば医薬品マーケットは半分になるわけです。
ましてや製薬企業からすれば、他社の後発品に自社製品が置き換われば、売上はゼロですから、製薬企業が大打撃を受けていることは明白です。
医薬品の特許は概ね、発売から10年程度で特許を失うことが多いので、製薬企業は10年以内に過去の製品を超えるポテンシャルの薬剤を生み続けるサイクルを維持できなければ成長がないというビジネルモデルに変化してしまいました。
つまり、過去のストック型に近いビジネスモデルではなくなってしまいました。
社会保障費削減の標的
グローバルで戦う力の乏しい、ほとんどの内資系製薬企業にとって、主戦場は日本国内でした。
しかし、困ったことに日本自体も高齢化などの問題で、その社会保障費は逼迫しています。
上述の後発品の普及もその一部ですが、医療費削減の標的とされているのが、製薬企業です。
厚生労働省は公的価格である薬価の切り下げや、新薬の評価の仕方の変更、過度な薬剤の使用を制限するための仕組みを次々と打ち出しています。
これまで、製薬企業は国の「護衛船団」に方式によって守られていると言われていましたが、まさに今、その国から切り捨てられようとしています。
正確には、その護衛船自体に守る力がなくなってしまったのです。
まとめ
製薬企業を取り巻く変化についていくつかピックアップをして記載をしました。
つまりは、過去の国による護衛船団方式の安定経営は終わりを迎えて、薬価改定や、医療費削減という環境変化の中、製薬企業は成功確率何万分の1とも言われる、難しいビジネスで成長し続ける必要が出てきました。
この様な理由から現代の製薬企業は決してディフェンシブ銘柄とは言えない状況にあると考えています。
実際に、大手企業の業績を見れば武田薬品の様にピーク時から利益が半減している企業。
後発品ビジネスや抗がん剤開発への方向転換を進める第一三共。
今後、大きなパテントクリフを迎えるアステラスなど、業績の変化が非常に大きいです。
それに対して時価総額はかなり割高の推移を示しているので、いずれ適正な株価を目指した際に、大きな株価変動を伴う可能性が高いと考えています。
一方で、中期的に大型の医薬品開発に成功した、小野薬品。
ロッシュの資本提携の元、安定的に医薬品の開発に取り組んでいる中外。
自社で画期的医薬品の開発に集中し、海外は他社へのライセンスアウトを使って、収益の拡大を続ける塩野義製薬など、苦しい中でも大きな成果をあげている企業もありますので、一概に製薬企業への投資を否定する訳ではありません。
つまりは今まで以上に、目利きの必要な投資セクターになったという印象を持っています。
あくまで個人的な意見ではありますが、特に年配の方で、大きな金額を配当目当てで製薬企業に投下している投資家が多い印象を持っており、その様な人は何を根拠に、その銘柄を選定したのか、どのタイミングを投資のゴールに設定するのかを見直してみるのも大切だと思います。
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